【ネタバレ】「型破り」な銀行の新ビジネス戦略 #28

タイトル:「型破り」な銀行の新ビジネス戦略

著 者 :浪川 攻

出版社 :ビジネス社

発行日 :2021年11月1日

苦境の背景

現在、デジタル化の進展を筆頭に、様々な要因により銀行のビジネスシーンが大きく変わろうとしている。
その激変は、個人や中小零細企業をターゲットとするリテール金融分野で起きている。
それには、2015年前後の出来事とリテール金融分野のビジネスモデルが関係している。

量的・質的金融緩和
安倍晋三政権の発足後、「導入後2年間をめどに物価上昇率2%」を目標として2013年から日銀が開始した金融緩和の強化策。

しかし、政府や日銀が目論んだ「金利水準の低下により、企業の資金需要が喚起されて、銀行の貸出は伸びて景気は循環的に好転する」というシナリオの達成は一向に見込まれず、あらゆる金利水準には低下の圧力が強まり続けた。

これにより、銀行にとっては、「金利水準の低下により、銀行の収益源である預金金利と貸出金利の差である利ザヤが縮小して構造的な収益悪化があわらになる」というむしろ悲惨な状況を招いた。

このような大胆な金融緩和によりデフレに陥らなかったという考えもできるものの、長期化した金利水準の低下は着実に銀行の収益力をそいでいった

マイナス金利
日銀が2016年2月に実行に移した施策であり、これにより、あらゆる市場金利が下がった。

銀行による企業向け、個人向け融資の金利設定は、市場金利の水準を基準にしている。
従って、市場金利が下がってゼロ水準に張り付いたり、マイナス金利に突入してしまったことで、融資の金利も引き下げざるを得なくなった。

一方で、預金金利はすでに著しく低下していたとはいえ、ゼロ水準やマイナス水準には設定できない(=預金者がいなくなるため)。

つまり、「マイナス金利」によって、すでに悪化していた銀行の収益源である「預金と貸出の金利差」、つまり利ザヤが一段と悪化した

従来モデルの限界
銀行はこれまでリテール金融分野に人海戦術で臨んできた。

・店舗の窓口業務をこなす人員をどれだけ投入できるのか
・店舗の周辺エリアの中小企業をどれだけ全面的に営業できるのか
・いかに店舗網を張り巡らせるのか
銀行はこれらの目的を果たすために、大量の人材採用を行ってきた。

しかし、「量的・質的金融緩和」や「マイナス金利」により、利ザヤが極端に悪化するなかでは、数多くの人材を配置しているリテール金融分野のコストはあまりにも過大であった。

そして、そのタイミングで日本に本格的に押し寄せてきたのがデジタル化の波であった。

これを受けて、2017年度の中間決算の記者発表では、三菱UFJ、三井住友、みずほの3メガバンクグループは相次いで、IT活用による「ビジネスモデル改革」とも言える戦略の内容を明らかにした。

一見すると、デジタル社会の到来に照準を合わせた改革のように見えるものの、そこには、従来のビジネスモデルがすでに臨界点を超えて、時代遅れと化しているという認識が見え隠れしていた

銀行の老朽化モデル

銀行のリテール金融分野におけるビジネスモデルが老朽化するまで見直しがされてこなかった理由は、銀行業という特殊な業種にある。

銀行業は免許制となっており、誰でも行えるわけではない。
新規参入するプレーヤーが限られていたことによって、銀行は、終始、同じライバルと貸出残高や利益水準などの目先的な数字の積み上げ競争に明け暮れてきた。

そのような銀行同士による同様のビジネスモデルの煮詰まった闘いが繰り返されてきたなかでは、伝統的なビジネスモデルを抜本的に見直す動機は生まれなかった。

ときとして変革に向けた議論が活発化した場面はあったといっても、そこから生み出されたのは本質的なモデルチェンジではなく、既存モデルのマイナーチェンジにとどまったり、あるいは、議論すらも、いつの間にか消えてしまったりしていた。

しかし、当然のことながら、社会構造や経済成長率などの外部要因は従来に比べると劇的な変化を遂げている。

銀行は、内向きすぎる競い合いをしているうちに、時代の変化に取り残されかけて、ビジネスモデルが経営環境に適さなくなっていったのである。

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