タイトル:Psychology of Money
著 者 :モーガン・ハウセル
出版社 :ダイヤモンド社
発行日 :2021年12月7日
逆転が存在する世界
この世の中では、学位もなく、専門的訓練も受けておらず、経験も実務経験もなく、人脈もない、そんな人がそれらを持ち合わせる人間のパフォーマンスを上回ることは通常あり得ない。
ただし、ファイナンス、つまり投資の分野に限ってはその逆転が起こり得る。
一般人が超一流の金融工学を学んだ人よりも大きな富を築くことも可能である。
理由:「運」というファクター
経済的な成果は、知性や努力だけでは得られない。
むしろ知性や努力とは無関係の「運」に左右される部分が大きい。
理由:ソフトスキルの重要性
経済的な成功は、ハードサイエンス(物理学や数学などの分野)では得られない。
そうではなく、何を知っているかよりも、どう振る舞うか、つまり、ソフトスキルが重要になる。
なぜなら、金融は数学に基づいた測定可能な分野ではなく、複雑で測定が難しい人間の心理や行動が大きく関わっている分野だからである。
実際のところ、ファイナンスの世界では、「何をすべきかを知っていることと、その人が実際に取る行動はまったくの別物」ということがしばしば起こる。
つまり、「人はなぜ借金をするのか」を知るためには、金利の専門知識を学ぶよりも、人間の欲望や不安、楽観主義を学ぶほうが重要になる。
従って、お金と賢く付き合うためには、お金にまつわる人間心理を学ぶことが大切になる。
運に左右される成功
投資の世界には、運とリスクが結果を左右することが往々にしてある。
良い投資判断をしたものの、たまたま不運に見舞われて資産を失った投資家。
一方で、特に優れた判断をしたわけでもなく、ときには無謀な判断をしたにもかかわらず、たまたま幸運に恵まれて資産を築いた投資家。
危険なのは、このような個々の成功例や失敗例から、
・どんな投資戦略が効果的で、どれが効果的ではないのか
・どんなビジネス戦略が効果的で、どれがそうではないのか
・どうすればお金持ちになれるのか?貧乏にならないためにはどうすればいいのか?
を学ぼうとすること。
先ほどの2人の投資家の結果のうち、再現性のある部分と、偶然の運やリスクによってもたらされた部分の割合を正確に知ることは不可能である。
大切なのは、もっと大きなパターンに注目すること。
多数の成功と失敗に共通するパターンを探すことで、有用な教訓を得られるようになる。
投資における最大の武器「時間」
ウォーレン・バフェットの純資産は845億ドルのうち、842億ドル(99.6%)は、バフェットが50歳を迎えた後に増えたもの。
さらに、そのうち815億ドル(96.4%)は、60歳半ば以降に増えたもの。
もしバフェットが30代で投資を始め、60代で止めていたら、1190万ドル(現在よりも99.9%も少ない)純資産しか持っていないことになる。
つまり、バフェットの経済的成功の秘訣は、10歳から投資を始め、4分の3世紀という長期間にわたって投資をし続けたことにある。
要するに、最大の成功の要因は「時間」だったということ。
そして、これこそが投資の効果を最大にする「複利の力」である。
良い投資とは必ずしも巨額のリターンを得ることではない。
そうではなく、そこそこのリターンを繰り返し何度も手に入れ続けること。
その投資スタンスを長期間に渡って維持する。
そのとき、複利が最大の力を発揮する。