タイトル:心配事の9割は起こらない
著 者 :枡野 俊明
出版社 :三笠書房
発行日 :2013年9月5日
不安や悩みの正体
不安や悩みのほとんどは、実は「妄想」や「思い込み」、「勘違い」や「取り越し苦労」にすぎない。
なにか不安や悩みがあって、心がどんより重たかったのに、ふとした言葉や行動がきっかけで、「なんだ、たいしたことないじゃないか」と、嘘みたい心が軽くなる経験は誰にでもあるはず。
要するに、客観的に見れば、「なんでもないこと」に振り回されてしまっている人が多いということ。
そんな、心配事の「先取り」をしないようにするためにはどうすればいいのか。
それは、「いま」「ここ」だけに集中すること。
そうすることで、余計な不安や悩みを抱えこまないように、心が整っていく。
日々の暮らしに結びついている「禅の教え」は、そんな「いま」「ここ」に集中するきっかけの宝庫である。
脚下照顧(きゃっかしょうこ)
部屋に上がるときに脱いだ靴をきちんとそろえる。
喫茶喫飯(きっさきっぱん)
余計なことを考えず、お茶をいただくときにはお茶を飲みことだけに集中して、ご飯をいただくときにはご飯を食べることに集中しなさい。
こうした一見「あたりまえ」のことを大切に、丁寧に実践することで、「いま」「ここ」だけに集中できる。
減らす、手放す、忘れる
「世の中には自分ではどうにもならないことがある」というのは、生きていくうえで、逃れられない事実。
どうにもならないことは、どうにもならない。
たとえ全身全霊で取り組んでも、どうにもならない。
それをどうにかしようとするから、しんどくなったり、苦しくなったりしてしまう。
従って、自分ではどうにもならないことは、そのまま、あるがままに受け取っておけばいい。
むしろ、どうにもならないのだから、受け入れる以外の選択肢はない。
その状況を受け入れてその状況と「共存」する。
そして、自分がいまできることに向き合う。
心を向けるべきは、「どうにかなる」ことのほうである。
「いま」に集中する
「この仕事は自分に合っていないのでは」「やりたい仕事と違う気がする」そんな悩んだ状態では仕事に本気で取り組めるわけがない。
結果として、仕事も人生もなんとなく「つまらなく」感じてしまう。
しかし、本気で取り組める仕事がどこかから降ってくることはない。
待っていれば楽しい人生といつか出会えるわけではない。
そうであれば、「いま」就いている仕事に「本気」になるしかない。
生きている「いま」を楽しむしかない。
大地黄金(だいちおうごん)
たとえそこがどこであっても、いまいるところ、自分が置かれている場所で、精一杯尽くす。
すると、その場所が黄金のように輝いてくる。
仮にやりたい仕事と違っていても、「いま」「そこ」で就いている仕事が「自分の仕事」である。
光り輝く黄金の大地を探すのではなく、そこにいる自分が大地を黄金に変える。
「自分にはいましかない」「自分にはここしかない」と思えたら、仕事に本気になるための、生きていることを楽しむための「工夫」が生まれてくる。
その瞬間、瞬間を充実して生きることができる。
そうすれば、迷いや不安が消えて、前向きになれる。
「競争」から一歩離れる
他人と自分の境遇を比べて、腐っても、クヨクヨしても、境遇が変わることはない。
境遇が変わらないのであれば、
・どんな境遇にあっても自分を活かすことはできる
・そこでの経験が、将来、飛躍のバネになる
と考えた方がよほど良い。
日日是好日(にちにちこれこうにち)
人生には晴れの日もあれば、雨の日もあるが、いずれの日にも、その日でなければできない体験、かけがえのない経験を積むことになる。
だから、すべてが有意な「好日」なのだ。
境遇が生き方を左右するのではなく、生き方によって境遇はどんなものにでもなる。
よい環境も悪い環境もない。
そこにはただ、一生懸命に生きる「場所」があるだけ。