タイトル:限りある時間の使い方
著 者 :オリバー・バークマン
出版社 :かんき出版
発行日 :2022年6月20日
「生産性」という罠
80歳くらいまで生きるとしても、人生の時間はたったの4000週間しかない。
従って、時間をできるだけうまく使うことが人生の最重要課題になる。
「人生とは時間の使い方そのもの」だといっても過言ではない。
ただし、本当にやりたいことのために、タイムマネジメントや、日々の雑務を効率化するためのライフハックを駆使して仕事の生産性を上げようとしてはいけない。
なぜなら、生産性とは罠だからである。
「生産性を上げて、やることリストを超速でこなせるようになれば、早く家に帰ってやりたいことが出来る」
と思うかもしれないが、実際は、
「生産性を上げて、やることリストを超速でこなせるようになると、さらに大量の仕事が舞い込んでくる」
ことになる。
つまり、どんなに高性能な生産性ツールを取り入れても、どんなにライフハックを駆使しても、時間はけっして余らない。
やることは終わるどころか、むしろ増えていく一方になる。
従って、人生で本当にやりたいことに時間を割くためには、生産性を突き詰めることが最善策ではない。
現実を直視する
何よりも効果的な時間管理術とは、「人生の時間はあまりにも短い」「自分には限界がある」という現実を直視することである。
やることが多すぎてパンクしそうなとき、多くの人は「時間の使い方を改善しよう」と考える。
「もっと効率的に働こう」「もっと頑張って働こう」「もっと長い時間働こう」と考える。
しかし、根本的な前提をまちがっている。
やりたいこと、やるべきこと、他人にやれと言われたことをすべてやっている時間は絶対にない。
それらを完璧にこなすためには、体力や才能、その他のいろんなリソースも絶対に足りない。
その足りない現実を直視する。
「何もかもはできない」と認める。
人生の時間は限られているため、何かをするには何かの時間を犠牲にしなくてはならない。
それにもかかわらず、「その犠牲に見合うだけの価値があるだろうか?」と立ち止まって考えることをしないでいると、やることが自動的にどんどん増えていく。
だからこそ、「何に集中し、何をやらないか」を意識的に自分で選択する。
限りある生という現実から目を背けずに、自分の有限性を直視して、あえてタフな選択に向き合う。
必要なのは効率を上げることではない。
すべてを効率的にこなそうとするのではなく、すべてをこなそうという誘惑に打ち勝つこと。
反射的にタスクをこなすかわりに、すべてをやりきれないという不安を抱えること。
そうやって、「全部できる」という幻想を手放すことではじめて、ひと握りの重要なことだけに集中できる。
「今」を生きる
「時間をうまく使おう」という考えにとらわれると、休みを「有意義に使う」とか「無駄にする」という考えをしてしまいがちである。
将来のためにならない過ごし方をすると、なんだか悪いことをしたような気分になってしまう。
しかし、人生には「今」しか存在しない。
未来が一瞬でも残されていると確信することは誰にもできない。
従って、本来、いま自分が生きているこの瞬間以外は、どこにも人生の意味などは存在しない。
それにもかかわらず、時間を有効活用することばかり意識すると、今日や明日という日は、理想的な未来にたどり着くための単なる通過点になってしまう。
人生最後かもしれないこの貴重な瞬間を、いつか先の時点のための踏み台としてぞんざいに扱うことになってしまう。
本当の意味で人生を生きることができなくなってしまう。
だからこそ、「今この時を最大限に味わおう」と思って過ごすこと。
何の役にも立たないことに時間を使い、その体験を純粋に楽しむこと。
将来に備えて自分を高めるのではなく、ただ何もしないで休むこと。
一度きりの人生を存分に生きるためには、将来に向けた学びや鍛錬をいったん忘れる時間も必要である。