タイトル:超DX仕事術
著 者 :相馬 正伸
出版社 :サンマーク出版
発行日 :2022年6月10日
ITとDXの違い
新型コロナウイルスの影響でテレワークが主体となり、家から一歩も出ない日が続き、運動不足で体重が増えてしまったAさんとBさん。
焦った二人は、食事のデータを記録するアプリを使って効率的にダイエットをすることを決意した。
二人とも毎食のデータを欠かさずにアプリに入力していたにもかかわらず、Aさんの体重に変化はなく、Bさんは見事ダイエットに成功。
このダイエットの結果を分けたこと、それはデータ入力後の行動であった。
Aさんはアプリにデータを入力しただけで、それを見返すことがなかった。
一方でBさんは、入力したデータを元に栄養管理を徹底し、カロリーオーバーであれば運動をしたり、食事量を減らしたりと、データに基づいて創意工夫をしていた。
要するに、アプリを入れるまでは同じであったが、データを活用したかどうかが異なっていた。
この例では、ダイエットアプリを導入することがIT化、それにデータを活用して改善し、その後太らない体質まで変えることがDX化ということである。
DXの定義
経済産業省の「DX推進ガイドライン」では、DXは次のように定義されている。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
つまり、DXとは、
① データとデジタル技術を活用する
② ビジネスを大きく変える
③ 競合に勝てる仕組みを作る
という3要素に分解することができる。
個人のDX
DXの重要性
変化が激しい時代において会社が生き残るためにはDXがもはや不可欠となっている。
しかし、DXは企業だけではなく個人にも必要な時代になっている。
新型コロナウイルスの影響によりテレワークが流行したことや、従業員にも効率化が求められるようになったことで、以前のように会社で遅くまで残業していれば仕事をやっていると思われた時代は終わった。
いかに仕事を効率化するか、いかに効率化して短期間のうちに成果を出すかが重要視されるようになった。
これらの背景から、個人がDXを活用して、自分自身の仕事効率化、生産性向上、関係者への信頼性向上のために仕事のやり方を変える「DX仕事術」が重要性を増してきている。
個人が会社を変える
・この仕事は〇〇さんしかできない
・この内容は〇〇さんしか知らない
のように技術や情報が属人化してしまうと、その人は仕事を休むことが出来なくなってしまう。それどころか、会社として、とても非効率な体制になっている。
一方で、この特定の人物しか持っていない技術や情報を共有化・データ化すれば、その人はいつでも休めるようになる。
加えて、互いに技術を共有することで、会社内でノウハウが蓄積されて、改善できるようにもなるかもしれない。
従って、現代では、
・自分しか持っていない技術や情報を、「いつでも」「誰でも」「どこでも」引き出せる状態にしておく
・他人が持っている情報を有効活用して仕事を効率化していく
ことが求められる時代であり、そのための仕組み作りに必要なものこそが「個人DX」である。
DX仕事術の4原則
1.始める前から失敗を恐れない
個人DXの場合は、予算も極力かけないで始めることができ、たとえ失敗したとしても大した痛手にはならない。
従って、失敗を恐れずにとにかく始めることが大切となる。
そのためには「S×3sマインド」で、小さく初めて、小さな成功体験を積み重ねることが重要である。
・Small start → 小さく始める
・Small success → 小さく成功する
・Small stack → 小さく積み重ねる
2.ツールを導入して満足しない
DXではツールを導入しただけで満足していては何も変わらないので、改善を繰り返していく必要がある。
そのためには、従来の「PDCAサイクル」ではなく、「OODAループ」という考え方が必要になる。
「OODAループ」とは、以下の頭文字をとった意思決定方法。
・Observe(観察)
・Orient(情勢判断)
・Decide(決定)
・Act(実行)
PDCA「サイクル」は順番通り回すことを想定しているが、OODA「ループ」は順番通り回す必要がない点が大きな違い。
逆に回しても、飛び越えてもよい融通がきく理論。
変化が激しい時代においては、「PDCAサイクル」のように「じっくり計画してから改善する」までの一連の流れではなく、「OODAループ」の方が相性の良い理論として取り上げられている。
3.データの重要性を理解する
DX仕事術においては、「データは宝の山である」ということを認識する必要がある。
AmazonやTSUTAYA(Tカード)におけるデータの活用はあくまで大企業の例であるが、データを活用する必要があるのは、大企業に限ったことではない。
データの母数を上げればそれだけ信頼度が上がる。
さらに、データは使い回すことも可能である。
目的に応じて必要なデータを集めて、それを活用していくことで精度の高い戦略を立てることができるようになる。
4.勘・経験・感情の「3K」に頼らない
ビジネスにおいて物事を決める際に、勘・経験・感情で決めてしまうとどうしてもブレが生じてしまう。
結果として、正確性が乏しいものになってしまう。
時には正しい判断ができなくなる場合もある。
しかし、データを活用すれば、これまで何となく決めていたものを正確な数値をもとに判断できるようになる。
当然、失敗も少なくなる。
3Kがいかなる時もダメということではない。
しかし、すべてを3Kに頼るのではなく、一旦冷静にデータを見て判断すべき時もあるということを念頭に置いておくべきである。
DXは「デジタルとデータを使ってビジネスや業務を変革させる」こと。
デジタル化するだけで終わりではなく、「データを活用する」のがDXである。