【ネタバレ】お金のむこうに人がいる #19

タイトル:お金のむこうに人がいる

著 者 :田内 学

出版社 :ダイヤモンド社

発行日 :2021年9月28日

人を中心に考える

生活を支えているもの
働く人がいなければ、お金は力を失う

蛇口をひねるだけで水が飲めるのは、水道代を払っているからではない。
水源地を管理する人、水質調査をする人、水道管を修繕する人。
見えないところで多くの人が働いているから、水が飲める。
水道代を払えるお金を持っていたとしても、誰も働いてくれない無人島では、水を飲むことはできない

つまり、私たちの生活を支えているのは、財布の内側(お金)ではなく、財布の外側(社会で働く人)である。
社会というものは財布の外側に広がっており、一人ひとりが助け合っている社会の一員なのである。

お金中心で考える経済
お金を中心に考える従来の経済では、
・お金を稼いだからお金が使える
・お金を使うためのお金を稼ぐ
・現在の私がお金を使って働いてもらえるのは、過去の自分が働いて稼いだから
と考える。

しかし、これでは、他人の存在に気付けず、自分のことだけを考えがちになってしまう。
結果として、社会全体で支え合うことができずに、みんなが困ってしまうことになる。

人中心で考える経済
「老後の生活の不安をなくすためには、お金さえ蓄えておければ大丈夫」
多くの人がそう信じている。

しかし、少子化で働く人が相対的に減っていく中では、お金を貯めることだけでは根本的な問題解決にはならない。
それにもかかわらず、私たちは「老後の問題」を「お金の問題」と考えてしまいがちである。

そうではなく、みんなが生きている空間を意識して経済を捉える
現在の私がお金を使えるのは、働いてくれる人がいるからだと考える。
その人たちが働くことによって、私の生活が豊かになると考える。

紙幣と税の関係

紙幣が流通した理由
紙幣の価値を支えているものは時代とともに金から国債へと変わっていったが、紙幣を持っていけば国債と交換してくれるわけではない。
それにもかかわらず、私たちが紙幣を使っている理由は「納税のため」である。

1873年の地租改正により、税金は円貨幣(紙幣や硬貨)で支払う必要が生じた。
これにより、円の価値を信じていようがいまいが、納税者は円貨幣を手に入れる必要が生じた。
こうして、税の徴収によって円貨幣の流通が加速した

税によるお金の循環
そもそも税は「みんなで負担を分け合うため」に存在する。

集められた税は、直接もしくは間接的に「みんなのために働く人たち」、つまり、役人だけではなく、学校の先生、警官、建設会社の従業員、医療関係者などに支払われる。
そして、貨幣を受け取った「みんなのために働く人たち」は、その貨幣で食料品や衣類を購入する。
食料品や衣類を売った人が手にした貨幣の一部は税として徴収され、再び「みんなのために働く人たち」に配られる。

こうやって税システムによって貨幣が通貨として普及し、社会の中を循環するようになった

紙幣をコピーすると何が起こるのか

紙幣の本当の価値
納税義務のある国民の視点では、紙幣は価値のある存在である。
一方で、国家の視点では、紙幣を刷っただけでは価値が増えたことにはならない。

しかし、税があることで、国民が自発的に働くようになる。
みんなのためにみんなが働く社会が作り出される。

つまり、紙幣自体に価値はない。
税金というシステムを導入することで、はじめて価値が生まれる。
紙幣を手に入れるために、みんながお互いのために働くようになる

紙幣をコピーすると…
国民が紙幣をコピーするようになると、コピーした紙幣を税金として支払えばいいので、働く必要がなくなる。

ただ、国民に働いてもらわないと困る人たちが出てくる。
それは、国家(政府)ではない。
困るのは、国民自身である。
みんなのために働く人がいなくなってしまうため、国民一人ひとりが自分で何もかもしなければいけなくなる。

つまり、紙幣が生活を支えているわけではない。
紙幣を手に入れるために国民が働くことが生活を支えている

紙幣をコピーしてはいけない理由は「紙幣の価値が下がるから」ではない。
「みんなが支え合って生きていけなくなるから」である。

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